蠍は留守です考

蠍の輪郭を見つめてふける思惟の痕跡

20170509013806

HCD-Netサロン「UXと組織のデザイン」

HCD-Netサロン「UXと組織のデザイン」に参加してきた。事業会社の人事担当としての取り組み、インキュベーターとしてスタートアップを育てるための取り組み、既存の組織を改編・スケールさせるための取り組みなどが聞けて大変に面白かった。

山本さんのお話

主に BEENOS 山本さんパートの「UX思考の組織づくりと、その課題」について思ったことなどを書き残しておく感じで、以下、取り留めもなく。

組織が育っていく過程で、誰に何を求めるのが正解なのか? を「組織によるよね」のひとことで片付けるのは簡単。だけど、属人性や暗黙知を乗り越えて、組織内に優秀な人材を増やしていくにはどうするのか...というのは、様々なところに共通した悩みになっていくはず。

ざっくり分けると、「UXにもビジネスにも明るく強く優秀なメンバーのみを外部から取り込み続けるか」「メンバーのUXやビジネスへの理解を深め/能力を引き出し/育ててゆくか」のアプローチがあるんだと思う。あちこちを見ていると、どちらもスケールしていく過程では似たような痛みを味わうことになるっぽいという体感値を持っている。

その点を、サービス・ドミナント・ロジックですべて指標化すれば解決できるのでは、という話も出た。制度設計として組み込むことで、UXなんて言葉を知らない人でも自動的に関与することになる仕組み。組織全体として持続可能なオファリングを目指すには、すべての人に等しくデザイン教育をするよりも仕組み化してしまった方が合理的である。...という考え方もできるということ。

それでもやっぱり、UX思考のミドル層というのは必要なわけで(制度は作る側がいないと成り立たないものね)、「リーダーシップを持った中間管理職としてのUXデザイナーが必要」という山本さんの話にも納得する。大きな組織だとトップとボトムの距離が遠いけど、真ん中あたりにいる人がミドルアップダウン・マネジメントで両者をつなげばよいのでは、と。

個人としてのキャリアパスも考えさせられた

組織のことを考えるなら、個人としてのキャリアパスも気になる。ので、つらつら考えた。

個人的には、開発のプロセスとキャリアパスのレイヤーを同じに捉えてしまうことで、妙な不幸が生まれるよなぁと思っている。開発の肯定で上流にいる人が偉い人/すごい人のすべてではなくて、各プロセスごとにエキスパートがいて、キャリアパスとしては自分のいるレイヤーのエキスパートを目指せばよいのではないかなと。

なんだかんだいって、「自分のコアスキルって何?」という問いからキャリアパスを描くのに、大きな飛躍は不要なのかもなぁ。少なくとも、そこにどんな「飛躍」があるのかは理解した方がいいのかもだけど。よく論争になる「UI/UX」という表記も、不幸を生んでいる一因になってたりして。UIを作っている人のキャリアパスが必ずしもUXなんとかである必要はないのにね。

UX思考ができる人材とビジネス視点での監査役両方が必要の図

キャリアパスという言葉が出たのでついでに言うと、UX思考ができる人がビジネス視点を得るよりも、ビジネスを理解している人がUX思考を得る方がずっとハードルが低いんじゃないかという話がある。私自身も経験上そう感じる部分が大きい。だから、UX思考とビジネス視点両方を持ったUXなんとかという人材が必要だとしたら、プロジェクトマネージャーとかディレクターあたりが担っていくと無理がなくて自然、って印象がなんとなくある。正規ルートっぽい感じというか。

だからやっぱりそれは「リーダーシップを持った中間管理職としてのUXデザイナーが必要」という山本さんの話ともつながっていて、自分の中では勝手にしっくり来ている。

もちろん、デザイナー不要論とかいろいろある世の中で、あえて飛躍をするという選択はよいことだと思うし、意識的にそこを目指すならそれがその人の答えだから、それでよい。それがよい。飛躍をするなら、理解とセットである方がよいという前提があるだけだ。飛躍、上等。

今回のサロンはとにかく面白かったが、サロンの後の食事の時間も、本編と同じかそれ以上に面白かった。今回もありがとうございました。

※ちなみに今回の話はビジネスレイヤーまで串刺しの話なので、開発レイヤーだけで同じ話題をするとしたら、それはまた違う話になる。それを間違えると不毛な話になるので、そういうところはきちんと押さえておきたい。

Copyright © Hitoyam.